ねじまき日記

音楽・映画・ドラマ・本などの感想文やたまに日記。

イノサン

イノサン 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

偉人たちを扱った乙女ゲームの影響で

今更だけどイノサンを読んでみたのですが…

 

1巻まではどうにか読み終えたものの、

表現がグロく、心理的にもエグかったので2巻中盤で挫折(汗

 

でも、実在の人物フランス革命期の処刑人、シャルル=アンリ・サンソン)を元にした内容で、物語は面白い。

そして一コマ一コマ美術品のように緻密な絵で描かれていて、紙面から圧倒的な熱量を感じる。

(自分は生々しくて耐え切れなかったけど、耽美な世界でもあります)

 

なんにせよ、色々衝撃的で。

それで少しネタバレになってしまうんだけど、印象に残ったシーンの覚書き。

※以下、ネタバレ注意↓

 

 

 

若くして先代の処刑人の父に代わり、

ある罪人の首を刎ねることを命じられたシャルル。

 

ところがその罪人というのが、狡猾な父に罪を着せられた、

未だ10代の美しい少年なんです…

 

 

 

そして死刑執行の日。

 

元々優しい性格であるため、

めちゃくちゃな葛藤の末、断頭台の上で半狂乱になり、

何度も何度も少年の首に剣を振り下ろしてしまったシャルル。

 

それを娯楽として見ていた群衆は

 

「年端もいかないような無抵抗の人間をあんな風に殺めて」

「この、人殺しめ」

 

と、言い始めます。

 

なんかこの場面で心抉られちゃって自分は挫折したんですけど、

すごくよくできた描写だなあ、とも思ってしまって。

 

“年端もいかないような”って…

それは首を斬るシャルルも同じような年齢なわけで、

それをさせてるのは周囲の大人たち。

(シャルルは彼の処刑に抵抗していたが、無力に終わってしまった)

そして処刑人の家に生まれてしまったという、運命。

 

命を奪う側と奪われる側、相反する立場でありながら、

“年端もいかない”“無抵抗な人間”という点では似ている二人。

 

ぐちゃぐちゃになってしまった心と肉体との交差を前に

ドクッ、と胸をぶん殴られたような気持ちになってしまいました。

 

そしてもし、私もあの中の群衆の一人だったら―――

同じように「酷い」「この、人殺し」

などと思っていたかも。ゾッ。

 

国の増税に喘ぎ、不満がたまりまくっている最中、

愚かな人間が断罪されるのを見に断頭台の前に群がったものの、

あまりの凄惨な光景を前に、蔑む対象は罪人から処刑人へと移り変わる。

 

当事者ではない者たちにとって、罪は目の前のものでしか語られない。

そしてその、多くの人たちの無責任な正義って、きっと一種の快楽でもあって。

 

いやあ、もうほんと、いつの時代も、人間って…

 

現代では死刑を見世物にするなんて、倫理的にアウトって話だけど、

それに似た心理自体は今でも身近で目の当たりにしがち。

 

“断頭台を見下ろす権力者たち”

“裁き裁かれる断頭台の上の二人”

“それを見ている群衆”

 

それぞれの立場が組み合わさり作られた残酷なシーン。

あまりにも若い二人が可哀想で。

これから処刑人として生きていくシャルルの苛烈なプロローグとして

深く印象に残りました。

 

 

んー…元々自分の感想が長ったらしいのを差し引いても、

ちょっと読んだだけで色々思うことが出てくるこの漫画。

きっと読み終えたらもっと胸にくるものがあるのかもしれない、、

 

エログロ苦手な人はまず無理だろうけど、読み応えある内容だなと思います。

(それでもメンタルが持たんのでリタイアするけど)